ブログは忘れてくれない
五号館のつぶやき(stochinai)様
お世話になっております。先日は3月のサイエンスカフェ札幌の相談に乗って頂き、本当にありがとうございました。私のような生物音痴にもたいへん丁寧にご教授していただいたこと、たいへん光栄に思っております。
さて、今年もあと数時間。あーー、行く年来る年。。。今年もいろいろありましたぁ。。。なんてのんきにしていたら、あちゃーー!まだありましたね!宿題!
ずいぶん前になりましたが、11月19日のつぶやき様の演習で出された課題「ブログにできないこと」についてのレポートをトラックバックしなくちゃです。締め切りは年内、そう今日までと記憶しております。
■ ブログは忘れてくれない ■
昨今のホームページとブログの比較は、以前私のブログ「11月21日/WEBサイトは使いよう(HPとブログ)」というエントリーで簡単ですが書かせていただきました。ブログとは、もともと万能につくられたシステムではなく、むしろやりたいことを特化したシステムですので、探すまでもなくできないことは多々あるかと思います。
そんな中で、今はできないと思っている技術的なことは、需要と技術の進歩があれば、来年の暮れぐらいには当たり前にできるようになっていることでしょう。
では、3年ぐらいしてもできそうに無いことを想像してみます。
「ブログで論文を書く」というのはたぶんできないでしょう。誰が最初に発表するかを競争している世界ですから、研究者は、どうしても密室で論文を書かなければならない。ですからブログで論文を公表しながら書くなんてことは考えられないはずです。
それでも、web+log(日誌)でblogとなったように、web+paper(論文)でbaperなんていうシステムが生まれるかもしれません。論文の引用が相互にネット上でリンクされていたり、ツリーのようにつながっていったり、「育つ論文(研究)」のイメージです。
さらに、読み手の読みたい言語で読めるようになっていたり。夢のような論文コミュニケーションです。論文制度が、人類の知の創造と共有に対して少なからず弊害をもたらしていた呪縛から解き放たれるかもしれません。
しかし、そんな論文制度を認める太っ腹な学会は3年経ってもできないでしょうね。
半永久的にできそうに無いことも想像してみます。
私がブログをはじめてすぐに感じたことは、「簡単に始められるが、簡単には止めにくい」ということでした。
自分のエントリー(記事)に対して誰かからトラックバックやコメントをいただくとそのエントリーは無くせないなぁと思うわけです。
また、誰かのエントリーに対して自分がトラックバックしたエントリーも無くせないなぁと思うわけです。
ブログはひとりで完結したサイトではなく、トラックバックをひとつでもいただくと、自分のブログはブログネットワークの片棒を担いだ状態になります。
それ以上エントリー(記事)を書き足さずに自分のブログをほっておくこともできます。ですが、トラックバックやコメントをいただたことで、読者がいることを意識し始めます。すると、次のエントリーも期待されていると思うのです。
そんな期待に応えたくなる気持ちにも後押しされ、またエントリーする。また、トラックバックやコメントをいただく。
そうして、自分のブログはそうそう易々と止めることができなくなっていきます。ブログを止め、エントリーをすべて消す操作はいたって簡単ですが、飼い始めてしまったペットのようになり、止め難いのです。
そんな個々のブログが増殖するブログシステム全体もまた、そのシステムが始まった時にひとつの運命を背負ったと思います。それは、ブログシステムを終わらせることができないということです。
個々のエントリーはビックバン後の宇宙のごとくふくらみ、つながり続けていきます。宇宙の営みが果てしないように。ブログも終わることができない営み(システム)なのではないでしょうか。
記憶媒体技術は容量を増やし精度をあげ急進化します。そのため、ブログのビックバンを易々と受け入れてしまうことでしょう。しかし、そんなに残しておくのはいいことなのでしょうか。
増え続ける記憶を抱え込む未来は、ヒトが持つ「限られた情報から推測する力、想像する力」を弱めてしまうのではないかと懸念します。
また、忘れることは負の作用のように思われがちですが、ヒトは忘れることで大事なことを際立たせ、くじけず前に進める生き物なんじゃないでしょうか。脳では忘れていたことを、外部記憶が残しつづけるのってシアワセなのでしょうか。
そして社会全体も、個人が亡くなっても、その個人の膨大な記憶や記録を残し続けるようになる。脳死の反対「体死」のようになり、肉体は滅んでも脳(記憶・思考)だけが生きつづける文明ってどうなのかなと思います。
(以上をもって宿題提出とさせていただきます。)
2005年10月から始めたこのブログにお越しくださいました友人の皆さま、CoSTEPの教員の皆さま、受講生の皆さま、偶然めぐり合えた皆様、ありがとうございました。みなさまに幸多かれとお祈りいたします。
さあ、まもなく2006年です。On your mark!
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レポートありがとうございました。もはやSalsaさんは、押しも押されもせぬブログのパワーユーザーになってしまいましたね。
3月のサイエンスカフェ札幌は、受講生だけではなくCoSTEPそのものの成果が試されるものになると思います。先日お話をうかがった限りにおいては、とてもおもしろいものになる予感と手応えを感じました。できるだけのお手伝いはしたいと思いますが、思いっきり楽しんでいただければ成功は間違いないと思います。
投稿: 5号館のつぶやき | 2005年12月31日 (土) 23時07分
つぶやき様、あけましておめでとうございます。
年末ぎりぎりで宿題提出された方、ワタシだけじゃなかったようですね。仲間がいたことを喜んでちゃだめなんでしょうけど。。。
パワーユーザーって、もしやエントリー書くのに人より余計にパワーを使っちゃってるユーザー(自分)のことではありませんか?とても軽やかに使えている気がしないのですが。。。いつになったら悟りを開けるか。。。楽しみにしております。今年もよろしくお願いいたします。
投稿: Salsa | 2006年1月 3日 (火) 02時43分
そう言えば年末に届いた Scientific American にGenomes for All という記事が載っていました。記事はゲノムを簡単に調べる最新の方法の解説といったところです。
http://www.sciam.com/article.cfm?chanID=sa006&colID=1&articleID=00046D59-19C0-13A7-99C083414B7F0124
Scientific American の日本語版が日経サイエンスという名前で出ているのですが、数ヶ月遅れのようですので、ご覧になりたければお貸しします。
http://www.nikkei-bookdirect.com/science/index.php
投稿: 5号館のつぶやき | 2006年1月 4日 (水) 13時50分
はじめまして。5号館のつぶやきから流れてきました。ブログで論文の発表と言うのは、ありうると思っております。査読仮定をへる必要がないので、日本人が味わってきた不利を減らすことが出来るものと考えております。
投稿: Eishi_Asano_MD_PhD | 2006年1月 9日 (月) 08時40分
Asanoさま、コメントありがとうございます。Wikipediaみたいなので信憑性の問題を解決できたら論文ブログ(研究過程を共同化)するみたいなことできないものかと思ったりしてます。Linuxのようでもあるかな?
イメージばかりが先行して、現状把握してないので、かなり世迷言言っています。世の学術関係のみなさま、ごめんなさい。
投稿: Salsa | 2006年1月 9日 (月) 14時31分
質問でっす。
論文て「先発表権」みたいなものがあると思うのですが、仮にある程度まとまった論文をブログ上で発表できたとしてもそれは得られないのでしょうか?雑誌でもあんまり変わらんような気がするのですが…。
投稿: painter | 2006年3月 8日 (水) 04時55分
painterさま、コメントどうも。反応遅くなってごめんなさ。雑誌だと編集委員会といった類の方たちの評価というものを受けて世に出てきます。ページ数も限られているというのもよかったり、わるかったりですが。
WEBでも、ブログのように日付詐称ができない仕組みと評価を受けるといった仕組みができれば、いい線いけるように思うのですが。。。
投稿: Salsa | 2006年3月11日 (土) 17時18分
ご返答ありがとうございます。
なるほど。ではその日にその論文がそのブログに掲載されていたことを証明してくれる機関があればいいということですね(これって新商売になりそうな気が。グーグルあたりがやりそう)。でもあまり簡単な手続きでこれが可能にになると、数が増えすぎてしまい特許で言うインターフェアランスの手続きが大変になるかも知れないですね。
投稿: painter | 2006年3月11日 (土) 21時55分
そうですね。郵便でも配達証明があるように、インターネットの世界でも、日付、時間、差出人等の配信証明なんてものが確立できたらと思います。
そうなったらあの永○議員のメール問題なども「どうよ」というのがすぐにわかるでしょう。
論文というのは、先に出すことも重要ですが、使われてなんぼという気がしてます。使いやすい、そして検索されやすく、捏造もすぐにわかるようにしておける機構ができたらなんて。。。。
投稿: Salsa | 2006年3月11日 (土) 23時29分